中川淳司さん

 米トランプ政権が発動した関税措置をめぐり、中国やカナダが世界貿易機関(WTO)に異議を申し立てました。世界の通商ルールに詳しい中央学院大の中川淳司教授(国際経済法)に「トランプ関税」の問題点を聞きました。

記事のポイント

トランプ米大統領の高関税政策は、①通商の国際ルールから明確に違反している②WTOに訴えても勝算はあるが、実益はほぼない③日米貿易協定違反を問うのは難しい、と指摘しています。

 ――トランプ関税は、WTOルールの違反になりますか。

 「真っ黒。というより、もう明白に黒だ。日本にも課しているトランプ関税は、自動車や鉄鋼・アルミ製品などを対象にした関税と、それらを除く幅広い品目を対象にした『相互関税』がある。いずれも、利害関係国と合意しなければ、国際社会に約束した税率を引き上げてはならないという『関税貿易一般協定(GATT)』2条に明確に違反している。さらに、国ごとに税率が違う相互関税は、すべての国を平等に扱うことを義務づける『最恵国待遇原則』の違反にもなる」

戦後通商の歴史上、前例のない事態

 ――1971年のニクソン・ショックの時にも、米国がすべての輸入品に一律10%を課しました。

 「似ていると言えば似ている…

共有
Exit mobile version