木村忠正さん

立教大学教授 木村忠正さん

 ネット世論に存在する、社会的弱者や少数者に向けられた不寛容で攻撃的な視線。文化人類学を基盤にデジタルネットワークと社会文化の変容を研究する立教大学教授の木村忠正さんは、そんな心理的態度を「非マイノリティーポリティクス」と名付けました。「弱者利権」「被害者ビジネス」といった言葉がネット上にあふれているのはなぜなのか。そのメカニズムについて語ってもらいました。

「非マイノリティーポリティクス」の視線

 2010年代半ば、ニュースサイトのコメント数十万件を分析し、ある視線の存在に気づきました。多数派として自分たちは十分な利益を享受していないのに、社会的弱者や少数者は、その立場の弱さを盾にとって権利を主張し、利益を得ている――。そんな強い批判的視線が、ネット世論に脈打っていました。

 こんな心理的態度を、「非マイノリティーポリティクス(非少数派政治)」と名付けました。これは「弱者利権」「被害者ビジネス」といった言葉とともに外国人や性的少数者、生活保護受給者などへの批判や非寛容として表れます。

 昨年には、都知事選での石丸伸二氏の躍進や兵庫県知事選の斎藤元彦氏再選について、SNSが果たした役割を分析するウェブ調査を実施しましたが、そこでも同様の心理傾向が見られました。

 トランプ氏が大統領選で勝った米国でも、同じような現象が起きているのではないでしょうか。従来のリベラル的なアイデンティティー政治に対して、強烈な批判的、揶揄(やゆ)的視線が投げかけられています。

マスコミ批判の背景にある不満

 この非少数派政治がマスコミ…

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