弁護士の小町谷育子さん

 誰もが情報を発信できるネット時代の、報道とは――放送や新聞のあり方にも詳しい、弁護士の小町谷育子さんと考えました。

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 「報道」を定義する条文が個人情報保護法にあります。この法律は、個人情報を扱う事業者に対して、情報取得の目的を本人に通知するなど様々な義務を定めていますが、報道、著述、宗教活動、政治活動を目的とする事業者には、この義務が適用されません(57条)。憲法が保障する表現、信教、政治の自由を妨げないためです。

 57条2項に〈「報道」とは、不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること(これに基づいて意見又(また)は見解を述べることを含む。)〉とあります。放送局、新聞社などの組織も個人も対象。報道の範囲が恣意(しい)的に扱われないよう明文化されました。

 法律を作る過程では、伝える内容が報道に当たるかどうかの判断に公権力の介入を招きかねないと反対意見もありました。でも現在は、一般的な認識と合致していると考えられています。裏付けをとって事実を伝える。そこは、紙や電波の伝統メディアでもデジタルでも変わりません。

 正確な事実が伝わらない社会…

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