(25日、第107回全国高校野球選手権群馬大会準決勝 高崎2―17前橋育英 5回コールド)

 21年ぶりの準決勝進出を果たした群馬県内トップ進学校の高崎。徹底的に対戦校の戦力を分析し、ノーシードから公立で唯一ベスト4に上り詰めた。陰の立役者は「分析班」の坂守修弥・記録員(3年)。鋭い分析力でチームを支えた。

 試合の映像を見て、相手投手の球種、配球やその割合、くせなどを細かく分析。相手の各打者について、得意なコースや苦手なコースはどこか、引っぱる打球は多いか、セーフティーバントはあるか、足は使うのかなどを調べ上げ、配球の組み立てや守備のシフトに役立てる。

 分析は坂守記録員を中心に、1~3年生部員7人で分担した。群馬大会の組み合わせが決まった6月下旬から始め、次戦の相手となりうるチームの試合を偵察して動画を撮影し、勝ち上がるごとに動画をチェックしてきた。22日にあった準々決勝では、春の関東大会ベスト8で第2シードとして群馬大会に臨んだ桐生第一を6―2で破った。

 中学校の部活動で野球を始め、高崎では外野手としてプレーしたが、「元々身体能力は高くはなかった」。腰のけがで思うように練習できないときもあった。昨夏の群馬大会3回戦でチームは樹徳と対戦して1―2で惜敗。強豪私立に堂々と渡り合った先輩選手たちの姿をスタンドから見て、「自分もあの舞台に立ちたい」と思った。

 インターネットで情報を集めたり、チームメートに教わったりして、肩が強くなくても良い球を投げる方法を研究した。今年6月中旬に高崎商大付と行った群馬大会前の決起試合でその成果を発揮。左翼から本塁への返球で三塁走者のタッチアップを刺すことができた。プレーでも努力を諦めず、大きく成長した。

 高校に入ってから公式戦に出たことは一度もなかった。最後の夏の群馬大会も登録選手にはなれず、記録員を任された。「本来ならやはり選手として出たい。正直分かってはいたが、悔しかった」。スタンドでの応援に回った3年生部員の分まで思いを背負い、選手が自信を持って試合に臨めるよう、分析に力を尽くした。

 この日の前橋育英との準決勝でもその分析が生きた。四回裏無死一塁、2番打者の植松春希(3年)は左中間への適時二塁打を放ち、1点をかえした。植松は中学時代のチームメートでもあった前橋育英の2番手投手・井沢慶心(3年)の癖を分析情報で見極め、球種を予測して振り抜いた。

 エース黒田湊(3年)は一回表、前橋育英の4番打者・原田大聖(3年)を三振に仕留めた。分析で浮かんだ有効な球種で攻め、効果的に打ち取れたという。黒田は「分析はどの高校と比べても丁寧にやってくれている。配球でも打撃でも分析を信頼して、安心して試合に挑むことができた」と語った。

 高崎のスタンドには1回戦から多くの生徒が応援に駆けつけ、大会中屈指の大声援を送った。部員たちがその応援を引っ張った。チームは今年「No.1の公立校」になることをスローガンに掲げてきた。登録選手と裏方が力を合わせ、私立とも渡り合った。

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