地域住民が主体となって存続した「厚別ふれあい循環バス」。地域交通の新たなモデルケースとなるか、実証運行に注目が集まっている=2025年4月1日午前8時0分、札幌市厚別区、原知恵子撮影

 人口196万人の札幌市でも、運転手不足によるバス路線の減便・廃止が止まらない。

 そんななか今春、廃止されるはずだった路線を地域住民が主体となって引き継ぐ初の試みが始まった。「地域の足」を守るため、様々な模索が続いている。

月400人が利用していたが

 「これからが本番。皆さんに乗っていただくことが、何よりも重要です」

 今月1日、JR厚別駅前であった実証運行の開始式典。「厚別ふれあい循環バス対策検討会」の田中昭夫会長(81)は集まった約50人にそう呼びかけた。

 3月末までは「北海道中央バス」(本社・小樽市)がJR厚別駅を起点に、地下鉄の新さっぽろ駅やひばりが丘駅など地域を循環する路線を運行。多い月には1日400人ほどが利用していた。

 ただ昨年6月、中央バスは運転手不足を理由に「来春廃止」を地元に告げた。「それなりにお客さんは乗っていると思っていたのに」「通院や買い物が不便になる」――。住民の間には困惑と動揺が広がった。

 札幌市では、バス路線が廃止された場合、「近くにほかにバス停が複数ない」などの一定の要件を満たせば、市が主体となって代替交通を確保している。しかし、今回の事例は要件には該当しなかった。

 そこで提案したのが、「市の制度や補助金を活用しながら、地域住民が主体となって交通手段を導入する」というプラン。札幌では初の試みだった。

運転手不足による減便・廃止が止まりません。札幌市は「2024年問題」前と比べ対策予算を大幅拡充。外国人材受け入れに向け民間と協定も結ぶなど、対応を模索しています。

課題は運賃収入

 地元の六つの町内会は、田中…

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