26日に開幕するパリ五輪で、アラブ首長国連邦(UAE)の選手団が開会式で身にまとう民族衣装「カンドゥーラ」に、「メイド・イン・ジャパン」の生地が採用された。遠く約8千キロ離れた日本製が中東にわたり、なぜ評価されているのか。
繊維メーカー・シキボウ(大阪市)の製造子会社であるシキボウ江南(愛知県江南市)。UAE五輪委員会が採用したポリエステルといった化学繊維などでできたカンドゥーラの生地はここで生産され、6月、UAEの中心都市ドバイに向けて出荷された。現地では、着心地などに優れたこの生地を使って、全身を覆うカンドゥーラが、選手団それぞれの身体にあうよう仕立てられた。
シキボウ江南では1980年代から、中東地域に向けた民族衣装用の生地を手がけている。今月18日、在日UAE大使館であった贈呈式。親会社シキボウの尻家正博社長は「高品質、高機能な生地を高く評価いただいている。民族衣装のトップブランドとして認知されるまでになった」と感謝のあいさつ。五輪用のカンドゥーラは26日の開会式で披露されることとなり、シキボウ関係者は「(見るのを)ワクワクして待っている」という。大使館のマルワン・アフメド・アルナクビ次席も「カンドゥーラはUAEの人たちに愛される衣装で、伝統と誇りを感じている。シキボウの生地を採用できたことをうれしく思う」と話した。
コスト競争などにさらされ、出荷額の縮小が続いてきた国内の繊維業界。そんな中でも、遠く離れた中東で日本製生地が評価されているのはなぜなのか。
シキボウなどによると、中東は深刻な水不足が課題となっており、製造の過程で水が欠かせない衣類や生地は輸入に頼らざるを得ない。一方で、伊勢湾に注ぐ木曽川水系の軟水に恵まれた愛知県の尾張西部地方などは「尾州」と呼ばれ、日本の繊維産業の集積地の一つとして、産業が根を張ってきた。
シキボウ社長「共に五輪に参加、当社の誇り」
培ってきた技術力も、中東で受け入れられている理由という。
たとえば、染色などの工程を…