(11日、第107回全国高校野球選手権大会2回戦 日大三3―2豊橋中央)
日大三のエース近藤優樹は絶体絶命のピンチで、一塁側の相手スタンドから流れる応援曲を笑顔で口ずさんでいた。
「すごく楽しみにしていたので」
同点の七回、連打に失策が重なり、無死二、三塁の場面だ。3、4番を得意の変化球で打ち取ると、敬遠を挟み、次打者を遊ゴロに仕留めた。
数日前、豊橋中央のスタンドに甲子園常連の東邦のマーチングバンド部が駆けつけると知った。その応援曲をユーチューブで検索し、2日前から大音量で何度も聴いた。
対戦校の応援を試合前に調べるのは、春から始めたルーティン。昨秋の都大会でのコールド負けがきっかけだった。「自分しか見えていなくて。周りの音が聞こえなかった」。余裕を持てるように、客席の音にも耳を澄ませるようになった。
次の相手は高川学園。「また(応援曲を)調べて、夜に聴こうと思います」。白い歯を見せて笑った。