フジテレビの第三者委員会が近く調査報告書をまとめます。問題の発端となったトラブル対応の実態や、日枝久・取締役相談役が長く君臨してきた体制にどこまで切り込むのかが注目されますが、背景には日本企業に共通するもっと根本的な課題があると、企業統治に詳しい一橋大教授の円谷昭一さんは言います。どういうことなのでしょうか。
――今回のような問題が起きた際、社外の弁護士で作った第三者委員会が動くことをどう評価しますか。
「上場企業が不祥事の検証を第三者委員会任せにするのは、私からみるとおかしなことです。まさにこうしたときに働くべき人として、監査役や、監査を担う取締役(監査等委員など)がいるからです」
「監査役や監査等委員は株主総会で選ばれ、取締役の職務をチェックするために存在しています。第三者委は任意組織にすぎませんが、監査役や監査等委員には、監査をするために必要な法的権限が与えられているのです」
「親会社のフジ・メディア・ホールディングスでは、監査等委員も務める独立社外取締役として、大企業の元トップ3人が名を連ねています。取締役にどんな能力があるのかを一覧にした『スキル・マトリックス』をみると、この3人はいずれも『法務・リスク』のスキルを持っていると株主に説明されています。今回のような事態に対処できる人物として株主総会で選任されているわけです。にもかかわらず、不祥事が起きて第三者委が前面に出てきた。なぜ、独立性のある監査等委員が主導して検証委員会を立ち上げないのでしょうか。もちろん検証委に外部の弁護士らを加えるとしても、監査役や監査等委員が検証委で主導的な役割を果たすべきです」
――本来動くべき人たちが動いていないのは、監査役や、監査役を選ぶ企業の『やる気』の問題ということですか。
「そういう側面もあるでしょ…