カンボジアの地雷撤去活動に携わるフリーアナウンサーの久保田夏菜さん=2025年4月28日午後1時25分、広島市中区、山中由睦撮影

 テレビ局の情報番組に出演し、イベントの司会もこなす。広島を中心に活躍するフリーアナウンサーの久保田夏菜さん(38)には、もう一つの顔がある。カンボジアの地雷処理を担うNPO「国際地雷処理・地域復興支援の会」(IMCCD、松山市)の広島支部長だ。

 カンボジアは1970~90年代の内戦で地雷が埋められ、今も400万個以上が地中に残るとされる。その撤去を支援するため、14年前から毎年のように現地に赴く。コロナ禍で渡航しづらくなってからは、書き損じのはがきを集めて換金し、撤去費用をまかなっている。

 「地雷のそばを自転車で走る子ども。地雷を踏んで足を失ったおじさん。厳しい環境で生きる人たちのために何かできないか」

 大学卒業後、テレビ局のアナウンサーとして取材に出向いた。印象に残っているのは、東日本大震災の東京電力福島第一原発事故で、福島から避難した被災者の取材だ。

 取材を重ねると、東京電力への怒りだけでなく、故郷を離れた罪悪感も語り始めた。「足を運んで話を聞いて、初めて気づくことがある。それを伝えるのが私の責任だ」。考え方の軸になった。

 IMCCDの存在は、24歳の時に取材で知った。カメラを持ってカンボジアへ。戦火がやんだ後も住民を脅かす紛争の不条理さ、厳しい環境で前向きに生きる人たちを目の当たりにした。

 「遠い外国のことだけど割り切っていいのか。広く伝えたい」とドキュメンタリー番組を制作。さらに「興味を持つだけでなく、自分にできることはないか」と、取材者の立場を超えてIMCCDに加わった。

 活動内容を中学校や高校で講演し、カンボジアの食文化も紹介しながら平和の大切さを訴える。「入り口は何でもいい。身近なところから平和を考えてもらう。そんな活動を続けたい」

 広島市安佐北区出身。2歳と5歳の子の母親。広島大卒業後、2009年にアナウンサーとしてテレビ愛媛に入社。13年に中国放送に移り、16年にフリーアナウンサーに転身した。18年にヒロシマ平和創造基金の「国際交流奨励賞」を受賞した。

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