厚生労働省に新設された異種移植に関する専門委員会=2025年1月30日、東京都港区

 病気の人にブタの臓器を移植する「異種移植」が、海外で実際に行われ始めている。日本でも研究開発が進むなかで、若い世代の人はどんな意見をもっているのか。厚生労働省が12~30歳にアンケートを実施し、その結果を1月30日に公表した。回答者の多くは異種移植に好意的だったが、移植を受けた人への差別を防ぐことや、動物の命への配慮が必要だという意見もあった。

 病気で心臓や腎臓が働かなくなり、治療を受けても治らない状態になれば、臓器移植が選択肢になる。しかし、患者数に比べれば、臓器を提供する人は少なく、移植を受けられずに亡くなる人も多い。

 この状況を解決するため、人間ではなく、ブタの臓器を患者に移植する「異種移植」を実現させようと、各国で研究が進められてきた。

 期待が大きい一方、ブタの臓器は人間にとっては「異物」だ。移植されると、体内の免疫がブタの臓器を排除しよう激しく攻撃する「拒絶反応」が起きたり、動物の間でしか感染しない病原体が人に感染して、新しい病気が生じたりするリスクがある。

 また、人間のために動物の命を奪うことの是非など、さまざまな立場の人による話しあいが必要だと言われている。

 厚労省は、異種移植に対する若者の考え方を調べるため、昨年10~11月、こども家庭庁のウェブアンケートの仕組みを使って、中学生以上の登録者に意見を求めた。

 回答は113人から寄せられた。年代別では12~15歳が33人(29%)、16~18歳が31人(27%)、19~22歳が18人(16%)、23~30歳が31人(27%)。学生が約7割占めた。

 「異種移植」という言葉は全体の53%の人が知っていた。言葉は知らないが内容は知っているという人は27%だった。

 臓器不足の解決策としての異種移植の印象については、「とても良い方法だと思う」が22%、「どちらかと言えば、良い方法だと思う」が51%で、約7割が好意的な回答だった。

 「どちらかと言えば、良い方法だと思わない」は24%、「全く良い方法だと思わない」は3%だった。

 年代別でも、好意的な人の割合はおおむね同じだった。

 ただ、全面的に賛成ではなく、条件付きの回答もあった。

 提案された条件は、動物に必要以上の苦痛を与えないこと▽健康に影響が出ないと証明されていること▽(移植を受けた人が)社会的な差別を受けないこと▽移植する臓器以外の動物の部位も無駄にしないこと、などだった。

■患者の立場になったら?…

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