現場へ! 逆風 風力発電(2)
薄暗いスギやヒノキの人工林を抜けると、目の前にブナの「楽園」が広がった。
芽吹いたばかりの稚樹(ちじゅ)から、直径1メートルを超す樹齢200年以上の大木まで、世代を超えて共生している。
「これだけ様々な樹齢のブナ林が残されているのは貴重だ」。4月中旬、現地を視察した高知大の石川慎吾名誉教授(73)は話した。
稜線近くに最大36基の風車計画
ブナの楽園が広がるのは、高知県香美市と大豊町にまたがる奥神賀山の稜線(りょうせん)だ。高さ最大約180メートルの風車が最大36基建つ大きな陸上風力発電の計画が浮上している。
ブナ林は水を蓄え、川を育む。その実はツキノワグマの好物だ。周辺は絶滅危惧種のクマタカも生息し、サシバの渡りのルートとされる。
森林の面積が多い高知県でも、人の手が入っていない自然林は少ない。石川さんは、事業が環境に与える影響を審査する県環境影響評価技術審査会の委員でもある。「ブナ林は貴重な存在。生物多様性と水源を守るため計画から外すべきだ」
計画地のふもとを流れる物部川は、アユ漁で知られる。近年はシカの食害で木が枯れて山の保水力が落ち、流域に三つあるダムに流入する水は濁りがとれにくくなった。
「取り返しつかぬ」地元漁協は反対
視察した翌日、香美市の中央…