A-stories 8がけ社会とまちの未来(3)
人口減少が進む2040年。高齢化で社会の支え手はますます必要になるのに、現役世代は2割減る「8がけ社会」がやってきます。大都市の中で顕著な人口減に直面する神戸は、縮小する将来を見据えた策を打つ一方、激しい人口争奪戦の最中にあります。葛藤する神戸を通じて、持続可能なまちの未来を考えます。
神戸のベイエリアは今、大型施設の新装や開発で活気づく。
4月にまちのシンボル・神戸ポートタワーが、6月に神戸須磨シーワールドがリニューアルオープン。来年は1万人収容のイベント向けアリーナや神戸空港の新ターミナルが完成予定で、JR三ノ宮駅前も大型開発で槌音が響く。地元財界は「神戸はこれからが面白い」(地銀首脳)と勢いづく。
ただ、市内の若者たちの多くは、目を外に向けている。
6月、そのベイエリアにある国際展示場で開かれた合同企業説明会には、市内外の企業約70社がブースを開き、大学生約千人が訪れていた。
関西学院大3年の女子学生(20)は神戸市出身。できれば地元に残りたいが「就職先は市内に絞っていない。自分に合っている企業があれば東京でも大阪でもいい」。神戸市内の大学に通う京都市出身の女子学生(20)も「企業で選ぶので、働く場所はどこでもいい」。出展企業の6割を占めた地元企業と学生とのズレが目立った。
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神戸市には21の大学・短大が本部を置く。その数は、20ある政令指定都市中5番目の多さだが、学生たちの大半は卒業後、市外に職を求めて転出する。昨年の20代の転入者数は約3万人で全体の約4割を占めたが、転出者数も同水準で、あわせると増加はわずか58人。自然減(約9800人)を補えるポテンシャルを、生かせていない。「神戸にはメーカーやBtoB(企業間取引)を中心とした企業が多く、知名度が低い。企業側が魅力、やりがい、まちの暮らしやすさを学生たちに伝え切れていない」(企業説明会の主催者)
神戸商工会議所の川崎博也会頭(前神戸製鋼所会長)も7月の会見で、働く街としての求心力の低下を挙げた。「神戸は良いまちだが、働くにはやはり大阪や東京に魅力で負ける」
厳しい表情の裏には「一昔前は違った」との思いがにじんだ。
「就活生は大阪よりも神戸を選んでいた」1980年代
神戸は川崎重工業、三菱重工…