ピカチュウのポテッとしたシルエットが好きだった。
小学校低学年だったころ、ですけさん(33)はアニメ「ポケットモンスター」を毎週見ていた。
でも、学校で友達がポケモンパンに付いてくるシールを自慢したときは、ただそれを眺めているだけ。
家が貧しく、ポケモンパンを買ったことがなかったからだ。
母とスーパーに行く時の合言葉は「見るだけね」。
駄々をこねてお菓子を買ってもらう子を見て、効果があることは知っていた。
でも、家計簿を前に難しい顔をしている母を知っていたから、それはしなかった。
それに、当時は「我慢している」という感覚がそもそもなかった。
買い物カゴにポケモンパンを入れてみた
学校へ行くと、相変わらずクラスの子たちがシールの見せ合いっこを楽しんでいた。
やっぱり自分もポケモンパンを買ってみたい。シールが欲しい。
母とスーパーに行った際、買い物カゴに2~3個のポケモンパンを入れてみた。
普段、家ではパンを食べないので、そもそもパンコーナーに行かない。
母が他の商品を見ている間にポケモンパンを取ってきて、他の商品で隠すようにしてカゴの下の方に入れた。
1個ではなく複数個を入れたのには、理由がある。
「多めに入れておけば、全部は無理でも1個は買ってくれるかも」と期待したからだ。
レジで母が会計をしている間、商品を詰める台のあたりで待っていた。
ドキドキしながら見守っていると、母がポケモンパンに気づいた。
「怒られるかも」と覚悟した…