近年、プラスチックによる汚染が環境問題の一つとして指摘されている。その中でも、私たちの移動手段として欠かせない自動車が汚染源となっている。
汚染源として懸念されているのが、「タイヤ摩耗粉じん」だ。車の走行時にタイヤが路面と摩擦することで発生する、タイヤの「トレッド」という表面の素材と道路の舗装材が混ざった微小な粉じんのことをいう。
多くの粒子の大きさは約0.1ミリで、髪の毛の太さと同じくらい。タイヤのトレッドには、天然ゴムや石油由来の合成ゴムタイヤの強度を高めるカーボンブラックやシリカといった補強材などが含まれている。
合成ゴムはプラスチックと同じ、石油からとれる「ナフサ」という油が原料。国連環境計画(UNEP)は、タイヤ摩耗粉じんを細かなマイクロプラスチックとみなし、「環境に排出されるマイクロプラスチックの主要な発生源の一つ」としている。
粉じんは、大気中や土壌へ、雨に流されれば川から海へ流れ込む。国際自然保護連合(IUCN)の2017年の報告書では、海へ流出するマイクロプラスチックの約28%がタイヤ由来だと推計されている。
ギンザケが大量死、人へのリスクは
実際に生き物への影響も指摘されている。米国北西太平洋のギンザケが繁殖のために都市部の河川に戻り、その周辺で雨が降ると、大量死が発生。この原因は、タイヤの劣化防止剤として含まれる化学物質「6PPD」が、大気中のオゾンとの化学反応で生成される化合物だったと、20年に科学誌サイエンスで報告された。ほかの研究では、生物の種類によって、毒性の感受性に違いがあることが分かっている。
国内でも生き物の体内から検…