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担ぎ手が足りず、直径を小さくした「鬼の修正会」のたいまつ。以前は1メートルあったが、今年は80センチほどにした=2024年2月29日午前10時44分、福岡県筑後市、添田樹紀撮影
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 お祭り人間、集まれ――。福岡県は祭りなど伝統行事の担い手を「派遣」する取り組みを始めた。全国的に少子高齢化や過疎化などで担い手が減るなか、祭り存続のために試行錯誤を重ねている。

 「オイサ、オイサ」。1月7日、同県久留米市の神社「大善寺玉垂宮」で行われた火祭り「鬼夜」で、火の粉が舞う境内に男たちのかけ声が響き渡った。

 全長13メートル、直径1メートル、重さ1.2トンの大たいまつ6本に火をつけ、さらし姿の男たちがカシの棒で押し上げながら境内を回る。汗を流す担ぎ手の中に、県が派遣した「地域伝統行事お助け隊」の姿があった。

 2023年度から始まったお助け隊は、希望者がボランティアとして登録し、派遣要請があった県内の地域行事に参加してもらう仕組みだ。各地域への移住や定住につなげる狙いもある。文化庁によると、個人を地域の行事に派遣する都道府県による取り組みは全国でも珍しいという。

 地域からの要望は、神輿(みこし)の担ぎ手や舞の演者から、交通整理まで、さまざまな仕事がある。県はお助け隊のボランティア保険代を負担する。

 5日時点で225人が登録し、これまで二つの行事にのべ8人を派遣した。

 1600年あまりの歴史があり、国の重要無形民俗文化財で、五穀豊穣(ほうじょう)などを祈る鬼夜では、神社がある地区内の人が担う、たいまつの担ぎ手が20年前ごろから不足し始めた。

 1本約30人が必要だが、20人しか集まらない年もあった。今年は、お助け隊や地元商工会議所なども含め参加者の8割近くを地区外からの応援に頼ったという。

 鬼夜保存会の清水秀一さん(62)は背景として、地域外に通勤する人が増えて関心が薄れていることや、翌日が平日の場合に深夜近くまで続く祭りに参加しにくいことなどを挙げる。さらにコロナ禍も追い打ちとなった。

 保存会は、たいまつが境内を回る回数を2周から1周に減らして終了時刻を30~40分早めることにした。押し上げ方などを図解する「マニュアル」も用意して初心者でも参加できるよう工夫を凝らす。

 ただ、「来年の1月7日は平日で、どれだけ参加してくれるか分からない」と清水さんは気をもむ。「先代から申し送りを重ねて伝わってきた祭り。後世に伝えていくのが我々の役目だ」

たいまつは細く、短く 遠方の参加者にホテルや送迎提供も

 3本のたいまつを引き回す筑後市の「鬼の修正会」でも担ぎ手が約15年前から不足し始め、お助け隊の派遣を要請した。今年の参加者60人強のうち、会場となる熊野神社がある地区からは12人ほどにとどまった。

 境内を回るたいまつを3本か…

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