ミャンマー中部を震源に28日発生したマグニチュード(M)7.7の地震は、隣国タイまで広範囲に被害が及び、タイの首都バンコクでは死傷者が出ている。ミャンマーの被害の詳細は不明だが、全権を握る国軍は震源地に近い第2の都市マンダレーなどの被災地に非常事態を宣言。「地震による死者や負傷者が複数出ている」と発表した。
米地質調査所(USGS)によると、地震は現地時間の午後0時50分ごろ発生。震源はミャンマー中部マンダレー付近で、震源の深さは約10キロ。
ミャンマー国軍は声明で、多数の負傷者が病院に搬送されているとして、緊急献血を呼びかけた。米ニューヨーク・タイムズはマンダレーの医師の話として、20人が死亡し、少なくとも300人が負傷したと伝えた。
地元メディアによると、マンダレーではかなりの被害が起きているようだ。同市内のミャンマー最後の王朝コンバウン朝の王宮内で建物や外壁が崩れたほか、市内の5階建てほどの住宅が複数倒壊している。英BBCは川にかかる大きな橋が崩落している映像を流した。
マンダレーに住む女性(39)は朝日新聞の電話取材に「アパートが大きく揺れ、棚も何もかもが倒れた」と振り返る。市内では地震の影響でインターネット通信と電気が止まっているという。
発生当時、記者はミャンマーの首都ネピドーからヤンゴンに向かう車中にいた。走行中に突然運転手がハンドルを取られ、路肩に急停止した後、1分近く強い揺れを感じた。
周囲では大型バスから降りて、戸惑う団体客の姿のほか、地震の影響とみられる亀裂が入った橋も複数みられた。
強い揺れに記者も遭遇 複数の被害情報
ネピドーで暮らす20代女性は「冷蔵庫や棚が倒れ、恐ろしかった」と話した。ネピドー中心部では建物の損壊が出ているとの情報もあるという。
震源から1千キロほど離れたバンコクでは、建設中だった33階建ての政府機関のビルが倒壊するなどし、バンコク都知事によると3人が死亡、作業員ら83人ががれきの中に閉じ込められている。公共テレビPBSの映像では、ビルは数秒で完全に崩れ落ち、叫びながら走って逃げる作業員らが、砂煙に包まれる様子が見える。別の場所でも建設用クレーンが建物から落ちるなどして計2人の死亡が確認されたという。
【動画】タイでビル倒壊 ミャンマー中部でマグニチュード7.7の地震=ロイター
バンコク中心部では地震発生の現地時間午後1時20分ごろに中程度の揺れが2分近く感じられ、オフィスビルやデパートなどにいた人たちが一気に屋外へ避難し、路上にあふれ出た。
PBSは、高層マンションの棟と棟をつなぐ上層階の通路が崩落し、屋上のプールの水が大量に周辺に飛び散る映像を流した。病院では、担架などで入院患者を外に避難させている。バンコク市内では、高架鉄道や地下鉄が運行を停止し、道路も渋滞で車が動かなくなった。バンコク都知事は同日午後、首都全域を「被災地域」に指定。帰宅困難者のために市内の公園を開放すると発表した。
バンコク中心部にある朝日新聞アジア総局では揺れで棚の本が落ち、引き出しが開くなどした。隣のデパートの壁には小さな亀裂が入った。バンコクで地震の揺れを感じるのは非常にまれで、会社員の男性(25)は「生まれて初めて地震の揺れを感じた」と話した。