半導体の微細化は、今や髪の毛の太さの10万分の1程度である「ナノ」の世界で進む。技術革新や超精密な加工が求められる中、限界もささやかれるようになった。それでもなお、世界中の研究者が小さな半導体をつくろうと熱をあげている。(藤波優)

 半導体を小さくできれば、一つのチップ上により多く載せられるため、性能が上がる。消費電力も減らすことができ、電子の移動距離が短くなることで処理速度も高まる。

IBMリサーチのオールバニ工場で製造された2ナノメートルウェハー。ウェハーには数百個のチップが搭載されている=同社提供

 半導体の性能については「ムーアの法則」が知られる。米インテルの共同創業者ゴードン・ムーア氏が約半世紀前、「半導体の集積度は1年ごとに倍増する」と予測。のちに「2年で倍増」に修正されたが、業界はこれを指針に微細化を進めてきた。

 ロジック半導体で使われる最先端のトランジスタは、台湾TSMCや韓国サムスン電子が手がける「3ナノ世代」だ。米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)15pro」には、3ナノ世代のトランジスタ約190億個が搭載されている。

「2ナノ」「3ナノ」は実寸ではない

 この「3ナノ」、実はどこかの長さ(幅)を示しているわけではない。以前は電子が移動する距離である「ゲート長」を示していた。その長さがナノメートル(10億分の1メートル)の単位だった。

 ところが単純に横方向の微細…

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