ロシアのプーチン大統領が国際刑事裁判所(ICC)加盟国のモンゴルを訪問しました。プーチン氏にはICCから逮捕状が発行されていたにもかかわらず、行事に参加するなど歓待を受けました。一方、2023年8月には、ICC加盟国の南アフリカへの渡航を見合わせています。南アフリカへの渡航断念と、今回のモンゴル訪問にはどんな違いがあるのか、ウィーン外交アカデミーのホルガー・ヘスティマイヤー教授(国際法)に聞きました。
- モンゴルはなぜプーチン氏を逮捕しないのか 元ICC裁判官が解説
――ICCはなぜプーチン氏を逮捕しないのでしょうか。
ICCはローマ規程という条約によって設立された国際裁判所です。その管轄権は限定的で、各国の国内制度にとってかわるものではなく、国内制度を補完するものです。条約の締約国にはICCの捜査や訴追に協力する義務があり、逮捕や引き渡しの要請に応じる義務も含まれます。ICCに逮捕権を持つ捜査官はおらず、執行はそれぞれの国家当局に頼ることになります。
――プーチン氏は23年3月にICCから逮捕状が発行され、同年8月には、締約国の南アフリカへの訪問を断念しました。なぜだったのでしょうか。
このときは(新興国のグループである)BRICSの首脳会議のため、プーチン氏の南アフリカ訪問が予定されていました。
訪問前に南アフリカで起きた訴訟
南アフリカではプーチン氏の…