南川史門「4つの4つの絵画」(2024年)の下を、台車に乗ってくぐる荒川ナッシュ医さん。作品は現在、荒川ナッシュさんのたっての希望で展覧会場の外へ移動している

 「ちょっと、デモンストレーションするので見ててください」。そう言ってやおら台車の上に仰向けになり、巨大な立体作品の下を高速で滑りまくる、長髪の男性――。東京・六本木の国立新美術館では最近、こんな珍妙な光景がしばしば発生していた。

 福島県出身、米国在住のアーティスト荒川ナッシュ医(えい)さん(47)の大規模個展「ペインティングス・アー・ポップスターズ」。同館初となるパフォーマンスアーティストの個展だが、輪をかけて珍しいのは、作家自ら解説する展覧会ツアーやイベントが会期中繰り返されていたことだ。

幾重ものコラボが問う「私」

 「毎日のように出来事が起こるので手間がかかるし、けがなどのリスクもある。美術館にとっても大冒険です」と、同館の米田尚輝主任研究員。「1回きりの出来事を扱う時間芸術であるパフォーマンスは、そもそも美術館と相性が悪い」。ニューヨーク近代美術館や英テート・モダンなど国際的に作品を発表してきた荒川ナッシュさんだが、日本では大々的に紹介されてこなかったことも、今展を企画する動機だったと話す。

 絵画とそれに関連したパフォ…

共有
Exit mobile version