奈良国立博物館(奈良市)の特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」(朝日新聞社など主催)には、日本を代表する仏教美術の白眉(はくび)が一堂に集う。主役はやはり仏像や仏画とはいえ、精巧な工芸品や少々風変わりな絵画もまた、観衆の関心を引いている。
驚異的な細工の舎利塔
まばゆいばかりに燦然(さんぜん)と輝く金の舎利塔。金銅製の「金亀(きんき)舎利塔」(奈良・唐招提寺蔵、通期展示)は暗い会場でひときわ目立つ存在だ。
唐招提寺の祖、鑑真和上が唐からもたらした3千粒の舎利(釈迦の遺骨)を収めるための容器とされる。実物の木造建築をそのまま縮めたかのような驚異的な細工は、もはやミニチュアの域を超えている。
蓮華(れんげ)座に乗る舎利容器の覆いは唐草模様の透かしをめぐらし、まるで邪悪を寄せ付けないイバラのよう。よく見ると、ガラス製の舎利容器の周りを飾り具の瓔珞(ようらく)が取り囲むという手の込みようだ。屋根を支える組み物はもちろん、そびえる相輪も揺れる風鐸(ふうたく)も、構造的な破綻(はたん)はない。
さて、この塔を支えるのは……