4団体の王座を防衛して喜ぶ井上=AP

 プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一タイトル戦が4日(日本時間5日)、米ラスベガスのTモバイルアリーナであり、王者の井上尚弥(32)=大橋=が世界ボクシング協会(WBA)同級1位の挑戦者ラモン・カルデナス(29)=米国=に8回TKOで勝利した。

「最後に最高」のKO劇

 日本と同じく、5月初めはメキシコにも祝日がある。ボクシング好きの米国系メキシコ人をあてこみ、この時期は米国を中心に大きなボクシング興行が行われるのが恒例だ。今年はその大トリを井上尚弥が務めた。

 2日に米ニューヨークで中量級の3大世界戦があり、4日はサウジアラビアでメキシコ人の人気ボクサーの興行があった。いずれも見せ場の少ない判定決着。世界のボクシングファンは欲求不満を抱えたことだろう。

 この日の試合前、ラスベガス興行の主催者はSNSに投稿した。「最後に最高をとっておいた」

 井上が通路に現れると、観客は一斉にスマホのカメラを向け、大歓声で迎えた。KO劇への期待感が会場に充満していた。それが、気負いにつながったか。

 2回、井上は深追い気味に放った大振りの左フックにカウンターを合わされ、ダウンを喫した。波乱の立ち上がり。

 ただ、距離感をつかんだ4回以降、強打を上下にちらし始めた。7回に右の連打でダウンを奪い返すと、8回はゴングと同時に猛連打を浴びせ、レフェリーが試合を止めた。逆転TKO。総立ちの米国ファンは「イノウエ」コールを響かせた。

 「(この週末は)ぼくが一番、盛り上げることができたんじゃないか」と笑った。

 リスクを負わないボクサーが増え、世界戦で打ち合いが減った。そんな時代に、井上は世界戦で11戦連続KO勝利。世界戦のKO勝利数を「23」とし、これは「世界新記録」とされる。際立つモンスターぶりが、改めて世界に示される一戦となった。

無名だったカルデナス、大健闘

 大健闘したカルデナスは試合後、現地メディアに称賛された。「おめでとう。情熱と勇気。新たなファンを獲得したのでは」と問われ、「私は負けは気にしない。最高の相手と最高の試合をすることが一番だからだ」と応じた。

 ランキングは世界1位ながら、世界的には無名の存在だった。井上が左フックを振ってくるのに合わせた、居合斬りのようなカウンター。左拳で井上の顔面を完璧にとらえ、ダウンを奪った。ただ、中盤以降は「太刀筋」を見極められて守勢に回り、最後はストップ負け。「悲しくはない。でも、がっかりしている。それが現実だ」

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