「欧州車は昔からいい音がする」「最近の日本車も負けてはいない」。ドアの閉まる音について、自動車ファンならこんな会話をして、マイカーへの愛着を深めることがあるかもしれない。だからメーカー各社は車の音作りをおろそかにはしていない。トヨタ自動車社内でも凄腕(すごうで)とされる、レクサス車両性能開発部のエンジニア白木伶治さん(32)に、そんな開発の裏側を聞いた。
自動車のドアを閉めたときの音を、心地よく響かせたい。車を使うとき、最初と最後に体感するものだからだ。ショールームでも聴くことができ、車を印象づける役割を担っている。
「ドンという高級感は、合唱パートならバス(男声低音)、パタンという軽快感はテノール(同高音)でしょうか」
愛知県立岡崎高校ではコーラス部に所属していたためか、こんな例えが出てくる。
在学中、全日本合唱コンクール全国大会で文部科学大臣賞1回を含め、金賞2回、銀賞1回を受賞した。自身はテノールの一員だった。いまはトヨタの高級車ブランド「レクサス」のエンジニアとして、研ぎ澄ました耳でドアの閉まり音を聞き分け、狙った音を作り出す。
自動車新モデルの開発は、コ…