ロシアのプーチン大統領は19日、核兵器の使用方針を定めた文書を改定し、大統領令に署名した。巡航ミサイルや無人機(ドローン)などがロシア領内へ大量に発射されるという確度の高い情報を得れば、核兵器の使用が可能になるとした。実質的に使用基準を引き下げかねない動きで、ウクライナ侵攻をめぐって対立する米欧への「核の脅し」を一段と強めた格好だ。
この文書は、プーチン氏が2020年に署名した「核抑止の国家政策の基本」。国の存在が脅かされる場合は通常兵器による攻撃でも核で反撃できるとする。
国営タス通信などによると、今回の改定では、核兵器保有国から支援された非核保有国からの攻撃は、「ロシアに対する共同攻撃」とみなすと明記。核兵器で反撃できる対象になると示唆した。また、反撃対象になる攻撃を明確化し、軍用機や巡航ミサイル、ドローンなどが大量に発射され、ロシア国境を越えるという確度が高い情報を得た場合、核兵器の使用が可能になるとした。
米メディアは17日、バイデン米政権がウクライナに提供した長射程のミサイルでロシア国内を攻撃することを許可した、と報じている。ロシアはこのタイミングで核兵器使用の基準を実質的に緩めると強調することで、ウクライナへの新たな支援を強く牽制(けんせい)する意図があるとみられる。
タス通信によると、ペスコフ大統領報道官は19日、改定の必要性について「現状に合わせる必要があった」と説明。一方、米国のミサイル使用許可に関連するのかという質問には「予定通り公開した」と述べるにとどめた。