終盤にさしかかった参院選で、海外からの介入でSNS上の偽・誤情報が拡散しているのでは、という懸念が広まっている。真相は不明で、社会が疑心暗鬼に陥っている事態そのものが「思うつぼ」だと専門家らは指摘している。

 X(旧ツイッター)が16日までに、SNSの投稿やニュースを紹介するある「まとめサイト」のアカウントを凍結した。Xが認証した組織アカウントで、約6万のフォロワーがいた。

 同時に、関連アカウント七つのうち四つも凍結。フォロワー数最多は約26万で、それ以外も10万前後のフォロワーがいるインフルエンサーだった。プロフィル欄には「日本を守りたいだけ」「日本が大好きなだけ」「反NATO、親プーチン」などとあった。うち二つのアカウントは、米シンクタンク「大西洋評議会」のデジタルフォレンジックリサーチラボ(DFRLab)によって「親ロシアに属する」と評価されていた。

Xで凍結されたまとめサイトのアカウント

 これらの凍結アカウントをめぐっては、ロシアのプロパガンダ(政治宣伝)を流しているとされる政府系メディア「スプートニク」を引用した記事があるなどとして、「ロシアの影響を受けている」との指摘がSNSで拡散していた。国民民主党の玉木雄一郎代表も「外国勢力からの選挙への介入工作は国会でも問題視してきた。まずは調べてみたい」などとXで言及した。

 凍結されたアカウントの一つを2年以上観察してきたサイバーセキュリティー会社「コンステラセキュリティジャパン」(東京)によると、アカウントは継続的に、日本政府を批判する投稿を繰り返していたという。

 G7広島サミットが開かれた2023年5月には、サミットへのデモ活動が行われているという内容に「#自民党全員落選運動」というハッシュタグをつけて投稿。無関係の写真が添付され、内容も虚偽だったという。

 別のアカウントは「石破ではムリ!」などと石破茂首相を批判する投稿を繰り返していた。

選挙介入をめぐる流れ

 同社がこのサイトの広告掲載料の振込先のIDを特定したところ、同じIDが使われたサイトを二つ発見。副業やスポーツに関する記事の紹介サイトで、広告収入目的だと推認できるという。コンステラ社の陶山航シニアアナリストは「ロシアによる工作とは考えにくい」と見る。

 一方、サイバーセキュリティー会社「ジャパン・ネクサス・インテリジェンス」(東京)は、このサイトがXに投稿した際に、大量のアカウントによる拡散の協力を解析した。35%は「ボット」と呼ばれる自動プログラムによるものだった可能性があるという。

 高森雅和代表は、ロシアが同様の拡散活動をしてきた事例はあるとしつつ、「類似の手法なのでロシアが背後にいる可能性は否定できないが、証明もできない」と話す。

 サイトの運営者は朝日新聞の取材に対し、「ロシア政府とこんな個人サイトがつながっているわけない」と答え、スプートニクの引用についても1万件以上の記事に対して1%に満たないと反論。関連アカウントの運営は別の「一般人」だとした。凍結理由についてXから説明はないといい、「言論統制だ」と批判した。

 Xは朝日新聞の取材に対し、18日夕の時点で回答していない。

 政府からも懸念の声が上がる。

 平将明デジタル相は15日の…

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