上智大学総合グローバル学部教授の渡辺紫乃さん=本人提供

 巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げ、賛同国のインフラ整備を支援して影響力を確保する――そんなイメージが強い中国の対外開発援助。しかし、現代中国論が専門の渡辺紫乃・上智大学教授は、注目していくべき別の取り組みの存在を指摘する。それは一帯一路と何が異なり、どのような関係にあるのか。

 ――中国の対外援助は近年、どのように進められているのでしょうか。

 「中国の開発援助というと『一帯一路』が思い浮かびがちですが、近年注目すべきは、持続可能な開発を掲げる国連で中国が主導して進めている『グローバル発展イニシアチブ(GDI)』という構想だと思っています」

 「2021年の国連総会で習近平(シーチンピン)国家主席が打ち出し、『人間中心』などを原則に、八つの協力分野を掲げています。途上国を意識しており、欧米や日本など、先進国視点での開発を進めるOECD(経済協力開発機構)へのアンチテーゼとも言えます」

 「22年には、途上国を中心に賛同する国々からなる、いわゆる『友の会』もでき、参加国は80カ国を超えたとも報じられています」

 ――GDIでは、どのようなことをするのですか。

 「分野は貧困削減や食料安全保障、感染症対策などに及びますが、融資なのか援助なのかや金額は明かされていません。計画中・実施済みのプロジェクトが、物資・技術支援では440、人材開発支援については693あると公表され、実績も積み重なってきています」

 ――一帯一路との違いは?

 「中国を主体としたプロジェ…

共有
Exit mobile version