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和歌山県立紀伊コスモス支援学校の授業が終わった後、岩出二中野球部の練習に参加する東山瑞生さん(左)=和歌山県岩出市、神元敦司撮影
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 連日熱戦が続く第107回全国高校野球選手権和歌山大会。15日の第3試合で和歌山県立紀伊コスモス支援学校(和歌山市)中学部2年、東山瑞生(みずき)さんが始球式を務めた。

 自宅近くにある岩出市立岩出二中野球部のユニホームで臨んだ。渾身(こんしん)の速球がバウンドすることなく捕手のミットに吸い込まれると、スタンドから拍手がわき起こった。

 マウンドに駆け寄る捕手からボールを受け取ると、東山さんの表情が少し緩んだ。「速い球が投げられた」。拍手する先頭打者に帽子をとって一礼した。

 小学部3年の時、本格的に野球を始めた。地元の学童軟式野球チーム「岩出グリーンズ」が練習している脇で父親の延生さん(50)と遊んでいると、監督に声を掛けられた。

 すぐに「やりたいです」と返事をした。

 普段は「『知らない人』に話しかけられると受け答えしないことが多い」(延生さん)のに、この時は違った。その後、グリーンズに入団した。

 打球を遠くに飛ばす1学年上の先輩にあこがれた。「練習をもっとやりたい」と夢中になった。小6になると投手と中軸打者を任された。

 ただ岩出グリーンズは小学生までで、その後は引退しなければならない。東山さんが進学する支援学校中学部に、野球部はない。

 「やれないなら、もう辞めよう」と言い聞かせた。本当は続けたかったが、その気持ちをぐっとのみ込んだ。

背中を押した「岩出の子ども」

 だが、中学部の生活が始まってすぐに転機が訪れた。

 家でくつろいでいると父親の…

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