現存する日本最古の和歌集「万葉集」に登場する植物を栽培し、公開している春日大社万葉植物園(奈良市春日野町)。万葉植物ってどんな植物があるんだろう? 初夏の陽気に誘われて、園内を巡ってみた。
5月1日の昼すぎ。臨時開門している東門から入ると、「藤の園」では遅咲きのシロノダフジなどが咲き誇っていた。訪日外国人ら観賞客が次々と写真を撮り、花をめでていた。
春日大社の社紋でもあるフジ。20品種約200本が植えられている。今年は例年より早い4月中旬から咲き、5月の黄金週間中にすべて見頃を終えたという。
春日野(かすがの)の ふぢは散りにて 何をかも 御狩(みかり)の人の 折りて挿頭(かざ)さむ(作者不詳)
(意訳)春日野に咲いていた藤の花はもう散ってしまった。狩りをする人びとは何の花を手折って髪に挿すのだろうか。
フジやハス、サカキなど、園が特におすすめする万葉植物45種には、万葉名と現在の名、ゆかりの万葉集の歌を紹介した解説板が設置されている。植物を見ながら万葉集の世界を味わうことができる趣向だ。
4月、日本古典文学の研究者で翻訳家のピーター・J・マクミランさんが手がけた英訳詩が楽しめるQRコードも解説板に取り付けられた。園の杉浦寛子さんは「外国人来園者にも日本の古典文学に触れて楽しんでもらいたい」と話す。
太陽に照らされて黄緑色に輝くモミジの葉も美しい。浮き舞台がある池(約20アール)のほとりではツツジがピンク、白色などの花をつけていた。アヤメやマユミなどの花も色とりどりに咲いていた。
「五穀の星」エリアでは
植物園は1932(昭和7)…