三越の買い物袋のデザインを手がけた友禅作家で人間国宝の森口邦彦さんによる個展が22~24日、東京・銀座の呉服店「銀座もとじ 和染」で開かれる。最新作を含む作品群が一堂に展示され、24日には森口さんの特別講演会もある。
半世紀以上にわたり、京都で友禅染めに取り組んできた森口さんは、近年、着物の枠を超えた活躍で注目されている。2014年にはリニューアルした三越の買い物袋に訪問着のデザインを提供。着物を着ない人にも伝統工芸を身近に感じてもらおうと、三越の依頼を引き受けたという。仏ジュエリーブランド「ヴァンクリーフ&アーペル」や英ブランド「リバティ」との協業も手がけている。
1941年、京都市出身。友禅の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された友禅作家・森口華弘さんの次男として生まれた。京都市立美術大(現・京都市立芸術大)日本画科で学んだのち、フランス政府給費留学生として仏に留学。パリの国立高等美術装飾学校でグラフィックデザインを専攻し、66年に卒業した。
親交の深かった画家バルテュスの助言を受け、友禅の道に進むことを決意し、帰国。67年から父のもとで修業を始め、花鳥風月をモチーフにした父とは異なる、幾何学模様を主とする抽象表現で独自の世界観を切り開いてきた。2007年、人間国宝に認定。作品は米メトロポリタン美術館や英ヴィクトリア&アルバート美術館に収蔵されている。
個展では、吉祥文様のひとつである亀甲模様をグラフィカルに重ねた「九重亀甲花文」や、さわやかな青色が際立つ「湖辺」と題した訪問着、個展のために制作した最新作など20点を紹介。森口作品の特徴である、点描のような「蒔き糊」の技術を間近に見ることができる。
22~24日、東京都中央区銀座4丁目の呉服店「銀座もとじ 和染」で。24日には銀座フェニックスプラザ(東京都中央区銀座3-9-11紙パルプ会館内)で特別講演会「伝統と革新―森口邦彦が語る未来の友禅」が開かれる。要申し込み。無料。
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12月2日から、朝刊文化面「語る 人生の贈りもの」で森口邦彦さんの半生を連載します。(松沢奈々子)