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実物の「伸ちゃんの三輪車」をデジタルスキャンする様子=1Future提供
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 原爆で亡くなった男の子の遺品の三輪車をモチーフにしたブロンズ像が9月19日から、スイス・ジュネーブの国際赤十字・赤新月博物館に展示されている。

 作品のモデルは、当時3歳だった銕谷(てつたに)伸一さんの遺品の三輪車だ。1945年8月6日、伸一さんは自宅前で三輪車に乗っていたときに被爆し、その夜に亡くなった。父親は伸一さんを焼くことをためらい、頭に鉄かぶとをかぶせ、宝物だった三輪車と共に庭に埋めた。40年後に遺族の手で掘り起こされ、広島平和記念資料館に寄贈された。

 今回の作品は、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が主体で制作し、寄付した。2018年にICANのベアトリス・フィン前事務局長が資料館に展示されていた三輪車を見て心を打たれ、ICANの事務所や国連欧州本部のあるジュネーブに置けないかと提案したという。制作に当たっては、日米のアーティストらが協力して三輪車をデジタルスキャンし、実物大に仕立てた。作品は博物館の入り口付近に設置され、恒久展示されるという。

 お披露目された19日、現地での記者会見で伸一さんの従姉妹の娘にあたる長谷部瞳さんは「三輪車は本来なら、子どもが楽しく遊ぶもの。焼け焦げて痛々しくなった姿から、何か感じてほしい」と訴えた。

 ICAN国際運営委員の川崎哲さん(55)は取材に対し、「世界の多くの人にとって、広島と長崎は遠く、リアリティーを持ちようがない。(作品は)ここに子どもがいたことを伝え、核問題を人道問題として考えてもらう効果がある」と完成を祝った。(魚住あかり)

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