下水に含まれる病原体を検出して感染症の流行把握などに役立てる「下水疫学」は、新型コロナウイルスの流行を機に注目が高まった学問だ。次なるパンデミックに備えた取り組みが国内外で進んでいる。
航空旅客数は最大で年間3千万人にのぼる日本の西の玄関・関西空港。大阪公立大・大阪国際感染症研究センターの山崎伸二教授(獣医国際防疫学)がここで集めているのは、航空機や空港の施設から集まった下水だ。
下水には日々、その施設や地域の人々に由来する排泄(はいせつ)物が流れ込む。その中に含まれるウイルスや細菌などの病原体を調べることで、そのエリアで流行している病原体の種類や感染状況などの情報を得ることができる。
こうした調査は、下水疫学調査(下水サーベイランス)と呼ばれる。新型コロナの世界的なパンデミックを機に、一挙に関心を集めた。
山崎さんの研究チームは、関空の浄化センターから毎週1リットル程度の下水を採取。特定の病原体の遺伝子を増幅して検出するPCR法や、未知の病原体などを含めて病原体を網羅的に検出できる次世代シーケンサーにより分析を行っている。
調査は大阪府市と連携した実証事業として、昨年10月からスタートした。来年春に大阪・関西万博の開催を控え、国外からの人流が増えることなどを見据えて、感染症の流行把握に役立てることが狙いだ。
これまでの調査で、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのほかに、デング熱を起こすデングウイルスなど、海外から持ち込まれたと考えられる病原体などが検出できたという。
山崎さんは「ターゲットとな…