名古屋市が販売を始める、下水汚泥から生まれた肥料=同市提供

 下水は「宝の山」では――。そう考えた名古屋市が、下水処理の過程で出る汚泥を肥料に生まれ変わらせた。汚泥に植物の育成に不可欠な「窒素」や、大半を輸入に依存するものの価格が高騰する「りん」が豊富に含まれることに目を付けた。年間1千トンの販売を目指す考えだ。

 下水汚泥は人のし尿などを体内に取り込み、分解した大量の微生物の死骸で、市内では1日に約2万トン発生する。現在でも、焼却灰をセメントの原料にしたり、乾燥させて固形燃料などに再利用したりしている。

 これまでも肥料成分が含まれていることは知られていたが、成分にばらつきが大きく、ニッケルなどの有害物質も含まれることから、活用されることは少なかった。また、他の肥料に混ぜての生産・販売も認められていなかった。

 ところが、ウクライナ危機や世界的な穀物需要の増加の影響で、りんなど肥料の原料価格が高騰。こうした状況を受け、国は昨年、下水汚泥を積極利用することに方針を転換。作った肥料の品質を定期的な成分分析で保証することを条件に、幅広い流通が認められるようになった。

 名古屋市は、すでに作っている固形燃料をそのまま肥料に転用できると判断。同市港区にある専用の処理施設で1日約7トンの肥料を作る計画だ。市の担当者は「肥料メーカーと協力し、利用の拡大に努めたい」と話す。(寺沢知海)

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