多くの妖怪伝説が残る徳島県三好市山城町の「道の駅大歩危(おおぼけ)」で、地元に伝わる妖怪をモチーフにした「妖怪紙クリップ」が発売された。地元の企業が地域を盛り上げようと、共同開発した。
地元の紙製品加工会社「T・Yソリューション」(同市三野町)は昨年、紙製品以外の商品開発を目指し、新たにレーザー加工機を導入。その活用方法を探っていたところ、社員から「妖怪のキャラクターを生かした紙クリップを作ってはどうか」とアイデアが出た。
地域は「児啼爺(こなきじじい)」をはじめ、約70種もの妖怪伝説などが残るとされ、地元の人も「山城町は山深く、急流やがけなど危険な場所も多い。子どもが近づかないよう、昔は妖怪で戒めていたのではないか」という。道の駅には伝説を紹介する「妖怪屋敷」もあるほどだ。
同社はイラストを描くのが得意な社員のデザインで、妖怪の紙クリップを5種類ほど試作。レーザー加工機を使い、プラスチックのような硬い特殊なファイバー紙から妖怪の形をくりぬいた。
「試作品を見てもらえないでしょうか」。同社の岸本悟工場長(47)らは今年1月、道の駅で妖怪屋敷を運営する市の第三セクター「山城しんこう」へ持ち込んだ。迎えた永本和明社長(60)も「デザインもよく、質も高くて面白い。ぜひ商品化したい」と応じた。
両社は約2カ月かけ、天狗(てんぐ)やエンコ(カッパ)、一ツ目入道、鬼姥(おにうば)など10種類の妖怪を、不気味ながらも愛嬌(あいきょう)ある見た目のデザインに仕上げた。商品につける妖怪の紹介文は阿波弁にした。
紙クリップは高さ約4・5~5・5センチ、幅約3・2センチ~4・6センチ、厚さ0・8ミリ。永本社長は「手に取りやすく、お土産にもぴったり。山城町の妖怪伝説を多くの方に知ってもらう機会にしたい」。岸本工場長も「紙クリップはメッセージカードに添えたり、本のしおりにしたりするのに向いている。商品を目当てに道の駅に足を運ぶ方が増えて、地元が盛り上がればうれしいです」と話す。
1個330円、5種類セット1540円、10種類セット3080円(いずれも税込み)。問い合わせは道の駅大歩危(0883・84・1489)。