世界で60羽以下しかいないサギを絶滅から救おうと、日本の研究者や動物園関係者たちが、ブータンで保全活動に取り組んでいる。日本にはコウノトリやトキを野生絶滅させてしまった苦い経験がある。「同じことを繰り返していいのか」。専門家は口をそろえる。
ブータンの首都ティンプーから車で数時間の山あいにある、シロハラサギ保全センター。敷地内にある大きなケージの中では、世界で2番目に大きいサギの仲間「シロハラサギ」が暮らしている。
簡単ではない飼育
シロハラサギは、ブータンやインド、ミャンマーなどに生息する。ただ、森林や湿地の開発などにより生息地が奪われており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に分類されている。現在、世界全体の個体数は60羽にも満たない。
ブータンでも水力発電のためのダム建設や道路の整備、天敵のサルによる卵の捕食などにより生息数が激減。2021年に建設された保全センターで、巣から保護した卵を人の手で育てるといった取り組みがされてきた。
ただ、シロハラサギは険しい崖や高い木の上に巣をつくるため集められる卵もごくわずか。ヒナを育てる技術もまだまだ不完全で、思うように取り組みが進んでいない状態だった。センターでは昨年、三つの卵を保護し孵化(ふか)させたが、3匹とも成長の過程で発育に異常が生じ安楽死させた。
そんなシロハラサギの保全に日本の専門家たちが乗り出した。きっかけは法政大の島野智之教授が、シロハラサギを守ろうとするブータン出身の大学院生と知り合ったことだった。
きっかけはダニ研究者
ただ、島野さんはダニ類の専…