2025年9月8日、ソロモン諸島のホニアラで開かれた太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議の開会式であいさつするマネレ首相=PIFのホームページから

 太平洋島嶼(とうしょ)国が揺れています。南太平洋のクック諸島が2月、中国と包括的戦略的パートナーシップ協定を結んだ後に、クック諸島と自由連合協定を結ぶニュージーランド(NZ)は経済援助を一部停止しました。中部太平洋のツバルでは、希望者の一部に永住権を認めるオーストラリアの施策に、全国民の8割以上が応募する騒ぎになりました。太平洋島嶼国の事情に詳しい東海大学の黒崎岳大准教授は「米政府の方針が揺れていることもあり、日米中豪などの競争が激しくなっている」と語ります。

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 ――クック諸島とNZの現在の関係は。

クック諸島、全国民がニュージーランドの市民権と旅券保有

 クック諸島は1965年にNZから内政自治権を獲得しましたが、現在も自由連合協定を結び、防衛・安全保障はNZに委ねています。クック諸島は旅券を発行せず、全国民がNZの市民権を持っています。約1万5千人が本国に居住しているのに対し、NZには約6万人が暮らしています。

 こうしたなか、クック諸島はNZに事前協議せず、中国と協定を結びました。中国は、クック諸島の排他的経済水域(EEZ)に眠る豊富な海底資源に注目しているようです。中国がクック諸島への経済支援やビジネスの拡大を進めることで、クック諸島政府としては、観光を含めた国内経済の振興を期待する動きもあるでしょう。内政に干渉しない中国の方針も、受け入れやすかったと思います。

 一方でクック諸島と自由連合協定を結んでいるNZとしては、中国の進出に警戒感を抱いています。中国人が移住するようになると、いずれはその子供たちが「クック諸島国民」となり、NZに移民する可能性もあるからです。NZも中国の影響力拡大は避けたい思いがありますし、クック諸島もNZ市民権は維持したいので、対立は決裂にまで至らず、お互いに気まずい関係が続いています。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ400人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

 ――ツバルでは最近、豪州へ…

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