中国の北京で3日、「抗日戦争勝利80年記念式典」があり、軍事パレードも行われました。中国の習近平(シーチンピン)国家主席のほか、ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記らが出席しました。中国の内情に詳しい李昊(りこう)・東京大学大学院准教授は、軍事パレードについて「従来は10年に1度、建国記念の際になされていたが、習近平政権以降、抗日戦争勝利を記念するタイミングで新たに実施されるようになった」と指摘。「習近平氏の権力確立と国威発揚、国内への宣伝の意図が強く見られた」と語ります。
- なぜ中国で政治スキャンダルが続くのか 個人支配の強化で弱まるもの
――式典は26カ国の首脳が参加する盛大なものでした。
大勢の人員や様々な装備を結集し、一糸乱れぬ行進が続く勇ましい演出は、中国人が好むやり方です。中国のナショナリズムの特徴を見ると、江沢民(チアンツォーミン)政権や胡錦濤(フーチンタオ)政権は「屈辱の歴史」を強調し、「侵略の被害者」という意識が強く表れていましたが、習近平政権は「勝者の意識」を強調しています。「我々こそ、戦争に勝った正義の陣営だ」と言いたいのでしょう。中国共産党と習近平政権の正統性に深く結びついたイベントでした。
――今回の海外からの出席者をどう評価しますか。
やはり権威主義国家の指導者が目立ちました。習近平政権の強硬な対外政策や新型コロナ禍の危機をきっかけに、西側諸国の対中イメージが悪化した影響が出ていると思います。また、ウクライナ侵攻のさなか、軍事パレードに出席したロシアのプーチン大統領と、肩を並べることを避けた国もあるでしょう。
ただ、習氏、プーチン氏、金正恩氏の3人が並んだ映像のインパクトは大きいと言わざるをえません。マレーシアやインドネシア、スロバキアなど、2015年には不在だった各国の首脳も出席しました。「中国にも友人がたくさんいる」とアピールできたのではないでしょうか。
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