記者会見する長野県松本市教育委員会の伊佐治裕子教育長(左)と坂口俊樹教育監=2024年6月13日午後、長野県松本市、小山裕一撮影
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 長野県松本市の市立中学校で昨年6月ごろ、運動部の外部コーチをしていた市内の30代男性が部員の女子生徒(当時3年)と性的関係を持つなど不適切な行為をしたのに、学校や市教育委員会がその後も約1カ月間にわたり、部活動の指導を続けさせていたことが分かった。市教委は取材に対し、「突然やめると、周囲で理由の詮索(せんさく)が始まり、個人の特定につながるおそれがあった」と説明している。

 13日に市教委が会見した。それによると、外部コーチの男性は昨年6月ごろ、部活動で指導していた生徒とSNSで連絡を取り、性的な関係を持ったという。生徒は間もなく養護教諭に相談した。学校側や市教委は、生徒から聞き取った内容などから男性と「(性的な)関係を持った可能性がある」と判断。その後、学級担任と保護者が県警に相談したという。

 一方で、学校側は事態を把握した後も、週末を中心に、男性に指導を続けさせていた。男性と生徒は顔を合わせることもあったが、練習に教員が立ち会い、監視していたという。

 当時の対応について伊佐治裕子・市教育長は会見で「『指導に来ないで』と男性に言うと、証拠隠滅につながるかもしれず、警察から『男性との接触を控えて欲しい』と言われた」と釈明した。市教委の坂口俊樹・教育監は取材に対し、「突然やめると、理由の詮索が始まるおそれがある。被害を受けた生徒が特定されないように配慮した。事実関係の把握にも時間がかかった」と説明している。

 その後、7月半ばの段階で保護者から校長に「(男性が)警察の事情聴取に対し、性的関係を持ったことを認めた」と連絡があった。これ以降、男性は部活動の指導に来なくなった。8月23日、校長は男性に今後は指導に関わらないようにと通告した。この男性が過去にも不適切な行為をしていたかどうかは「確認できていない」という。

 市教委によると、男性は学校教育法施行規則に基づいて市教委が雇用する正規職員の「部活動指導員」ではなく、学校が直接契約する「外部指導者」として、ボランティアで指導していた。

 市教委は「部活動指導員」が対象の研修会を定期的に開き、セクハラやパワハラの防止を指導してきたが、「外部指導者」は研修の対象外だった。伊佐治教員長は「市教委が行う研修に、今後は『外部指導者』も参加させるようにする」と説明した。また、男性が指導していたスポーツの県内の上部団体や近隣の教育長らで作る集まりでは、この男性に指導を依頼しないように要望したという。

 ただ、男性は市教委が雇用した指導者ではないため、懲戒処分などはできないという。(小山裕一)

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