事業費の高騰でいったん「白紙」となった東京都中野区にある「中野サンプラザ」の再開発について、区議会は19日、区が野村不動産ら事業者と結んだ事業推進の協定を解除する議案を可決した。再開発の見直しが決定的となった形で、区は今後、新たな計画作りを本格化させる。
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野村不動産の広報は朝日新聞の取材に「協定解除に関しては、現在も区と協議中。区側の解除の意向は承知している」とコメントした。
議案は、酒井直人区長が「事業者や他の地権者から解除への『内諾』が得られた」として、区議会に提出していた。区は7月以降に、区民や関係団体との意見交換会や市場調査を行う方針だ。その後、今回の再開発計画の大元である2020年策定の「再整備事業計画」を見直し、26年3月にも計画案を示すとしている。事業者も選び直す方向で進めるという。
当初の計画ではサンプラザの跡地に地上61階、高さ約250メートルの複合施設「NAKANOサンプラザシティ(仮称)」を建設する予定だった。高層棟にオフィスや住宅、展望施設、隣接する低層棟にはホールやホテルが入るとしていた。
だが、事業者の野村不動産などが24年9月、人件費の高騰や物価高を理由に工事費が「900億円超増える」と区に連絡。区は同年度の着工を断念し、29年度内の完成予定も延期した。その後、事業者側はコストを抑えるため、住宅割合を増やして高層ビルを2棟にする「ツインタワー」案を区に提示した。だが、区は3月、「区民の交流施設が後退した」などとして案を拒否する考えを表明していた。