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閉会式で優勝旗を受け取る旭川志峯の稲葉遼主将=2025年7月22日午後4時16分、エスコンフィールド北海道
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(22日、第107回全国高校野球選手権北北海道大会決勝 旭川志峯4―3白樺学園)

 エスコンフィールド北海道の真ん中で、旭川志峯の稲葉遼主将(3年)は、神妙な顔つきで優勝旗を受け取った。「春からやってきたことが、報われたかな」。そんな気持ちがわいてきた。

 春の地区大会。旭川北に2―4で初戦敗退した。その日、3年生が集まって「このままではダメだ」と話し合う中、主将交代論が浮上した。稲葉主将と、人を巻き込む能力にたけた熊野瑠威選手(3年)と、ダブル主将にすることに落ち着いた。

 「約半年チームを率いてきたのに……」

 ショックで、気持ちの切り替えは難しかった。けど、「私情を出すことはチームにプラスではない、前に進むしかない」と考え直した。稲葉主将がチーム全体の動きや声かけなど担当。試合中は熊野主将がひっぱることになった。

 加えて、自身は肩を痛め出場機会が減った。ベンチから声援を送ることが増えた。それでも勝つために腐らず役割を全うすることに努めた。

 それからチームは明らかに変わった。自主練習の熱意が増したほか、勝つためには日ごろの生活面も重要だと、部室をきれいに使うなど、意識改革が徹底された。「チームがどんどん一つになっていくのを感じた」

 結果は夏に開花した。初戦に旭川北と再戦。好右腕を相手に10安打を放ち、雪辱を果たした。それをきっかけに、順調に勝ち進む。

 迎えた白樺学園との決勝。大音量の応援が鳴り響き浮足立ちがちな雰囲気の中、稲葉主将はベンチから「自分たちのやれることをやっていこう」と声をかけ続けた。

 旭川実、クラーク国際など強豪校を撃破してきた白樺学園を相手に、チームはこの日、犠打や足を絡めて好機を広げる持ち味を発揮。相手先発の神谷春空投手(3年)の得意球のスライダーを冷静に見極めた。

 「勝てたけど、人としてはまだまだ。もう1段階レベルアップしたい」と稲葉主将。甲子園が、きっとその場所となるはずだ。

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