赤ちゃんの手を握りしめる母親の手

 生後4カ月の長男を殺害したとして、埼玉県警は7日、同県戸田市の母親(38)を殺人の疑いで逮捕し、発表した。母親は容疑を認め、「産後うつがつらかった」などと供述しているという。

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 蕨署によると、母親は4月21日午前8時ごろから午後1時半ごろまでの間、長男を水没させ、殺害した疑いがある。母親は「自宅の浴槽に沈めた」などと供述しているという。

 母親は、30代の夫との3人暮らし。同日午後1時ごろに夫から「妻と0歳の子どもが出て行ってしまった」などと110番通報があり、警察官が周辺を捜索。戸田市のJR戸田駅構内で長男を抱いている母親を発見した。長男は病院に搬送されたが、死亡が確認されたという。

 戸田市を管轄する県南児童相談所によると、事件があった4月21日午前9時半ごろ、母親から初めて電話があり、「子育てに自信がない」と相談があったという。話の途中で「子どもが泣いている」と電話が切られたが、昼過ぎに児相側から電話をかけたところ、その際は落ち着いた様子で、22日午後に直接会う約束をしたという。

 児相は「最善を尽くしたが、当日の対応は今後検証したい」としている。

 また、戸田市の「親子健やか室」担当者によると、母親は3月中旬から4月21日の間に、同市の産後ケア事業を複数回利用していたという。虐待などの兆候については「把握していなかった」としている。

「みんなもつらい」と打ち明けない人も

 この時期の赤ちゃんと向き合う親は、どんなリスクを抱えているのか。精神的に追い込まれる前に、周囲がサポートできることはないか。専門家2人に聞いた。

 産後ケア支援事業に取り組む産婦人科医の園田正樹さんによると、産後4カ月ごろの母親は「疲れがたまって、急に糸が切れてしまうことがある」という。出産で身体に大きなダメージを受け、不調が出やすいうえ、夜泣きなどで眠れない日が続き、さらに子育てという大きな変化を経験し、心身ともに追い込まれるためだ。

 この時期、子育てに自信があ…

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