「家庭教師のトライ」を運営するトライグループ(東京)が、「水俣病は遺伝する」と事実と異なる内容の教材をオンライン講座で使っていたとして、患者団体が訂正を求めたことが分かった。内容はすでに閲覧できない状態になっている。
水俣病被害者・支援者連絡会が4月末に把握し、環境省に連絡。是正を求めるとともに、同社にも訂正を求める要請文を送った。
連絡会によると、誤った内容の教材が使われていたのは、映像学習サービス「Try IT」の中学歴史で、四大公害病について動画と文章で説明する場面。文章では水俣病について「この病気が恐ろしいのは、遺伝してしまうことです。妊婦さんが水俣病にかかり、生まれてきた赤ちゃんまでもが発症することがありました」と記していた。
「差別偏見に患者は今も苦しんでいる」
水俣病は、有機水銀を含んだ工場排水で汚染された魚を食べた住民が発症した公害病で、遺伝することはない。生まれながらに水俣病となった胎児性患者も、汚染魚を食べた母親の胎盤を通じて有機水銀の被害を受けたもので、遺伝ではない。
だが誤った認識で、水俣病の被害地域出身というだけで結婚を断られる差別が広がったため、患者らは国や熊本県に差別・偏見をなくす啓発活動の徹底を求めてきた。
環境省によると、今月14日にトライに是正を要請。部分的な修正があったが十分ではなく、やりとりを続けていたところ、削除されたのに23日に気づいた。経緯の説明を引き続き求めるという。
連絡会事務局の元島市朗さんは「差別偏見に患者は今も苦しんでいる。正しい理解のため、国はきちんと啓発に取り組んでほしい」と話す。