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ABC予想の証明に使った「宇宙際(さい)タイヒミュラー理論」の論文

 数学の研究機関「宇宙際(うちゅうさい)幾何学センター」は2日、数学の超難問「ABC予想」を証明したとする京都大数理解析研究所の望月新一教授(55)らに、論文賞「IUT革新者賞」を贈ると発表した。賞金は10万ドル(約1500万円)。ABC予想を証明した理論に関連して、望月さんが賞を受賞するのは初めて。

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  • フェルマーの最終定理「おまけで証明」 IUT理論、京大・望月教授

望月さんも会場に姿見せるが……

 この日、ABC予想の証明に用いた独自理論「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」の最新内容を話し合う研究集会が東京で始まった。5日までの予定で非公開。冒頭の映像が約30分間だけオンライン中継され、受賞が発表された。

 当初は賞を贈る式典も予定され、望月さんが10年以上ぶりにカメラの前に姿を見せるか注目されていたが、式は急きょキャンセルに。望月さんは東京の会場には来ているというが、カメラに姿は映らなかった。

 受賞が決まったのは、解決まで350年以上かかった超難問「フェルマーの最終定理」の第2証明を与える論文(https://doi.org/10.2996/kmj45201別ウインドウで開きます)。

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フェルマーの最終定理とは

 フェルマーの最終定理は、仏ピエール・ド・フェルマーが1637年ごろに提案した「nが3以上の自然数(正の整数)の時、(xのn乗)+(yのn乗)=(zのn乗)を満たす自然数x、y、zは存在しない」という予想。

 フェルマーは生前、「私は真に驚くべき証明を見つけたが、それを記すにはこの余白は狭すぎる」という有名なメモを残したことで知られる。1995年に英国のアンドリュー・ワイルズ氏が楕円(だえん)曲線に関する「谷山・志村予想」の一部を解き証明するまで、350年以上解かれることはなかった。

 この最終定理を、望月さんやイワン・フェセンコさんらは、IUT理論を拡張することで証明した。IUT理論は元々、ABC予想の証明のため、望月さんが20年近くかけて築いた独自理論。ただ、ABC予想だけでなく、他の難問にも有効だと示した形だ。

 受賞を発表した宇宙際幾何学センターは、ドワンゴと日本財団が2025年春に新設をめざすオンライン大学(仮称、ZEN大学)の研究拠点。外部の専門家による審査委員会で審査し、受賞を決めたという。

 2日、受賞を発表した同センター所長の加藤文元・東京工業大名誉教授は「今回の論文は、古代から続く数論の研究方法を根本的に変えるものだ」と述べた。

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望月新一・京都大教授らの受賞を発表した宇宙際幾何学センター所長の加藤文元・東京工業大名誉教授(オンライン中継より)

■受賞を受け、望月さんが声明…

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