吉田寮の棟の入り口=2025年5月30日、京都市左京区、川村さくら撮影

 現役の学生寮として国内最古とされる京都大学の「吉田寮」(京都市左京区)の旧棟に住む学生らに、大学が明け渡しを求めた訴訟は25日、大阪高裁で和解が成立した。学生たちが今年度中に明け渡す一方で、耐震工事が終われば再入居できるようにすることで合意した。

 6年余りにわたる法廷闘争がようやく決着した。学生側代理人の森田基彦弁護士によると、大学は工事期間中に代替宿舎を提供することも確認したという。

 吉田寮をめぐっては、大学が2017年12月に耐震性に問題があるとして、18年9月末までに退去するよう寮生に通知。一部の寮生は応じず、大学側が19年に提訴した。

 昨年2月の京都地裁判決は、寮生の募集や選考を担う「吉田寮自治会」と大学が結んだ確約書を踏まえ、通知前に住んでいた14人は明け渡す必要がないと判断。一方で通知後に入った学生らに対しては明け渡しを命じ、大学側と一部の学生らが控訴していた。

 学生らは当初から「対話での解決」を求めてきた。外観を残すかなど具体的な工事内容は今後の検討事項で、和解後に会見した寮生の大隈楽さんは「老朽化対策をして吉田寮を残したいという思いから和解した。時間を浪費したが、大学は、今後は話し合いのテーブルについてほしい」と語った。

 大学側は「耐震性能が不足する棟に学生が居住し続ける事態を避けられる見通しとなったことは、大きな進展。学生の安全保持を最優先して、教育・研究環境の整備、学生の福利厚生の一層の充実を図ってまいります」とコメントした。

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