昭和初期の名建築とされる「旧鳴滝寮」(京都市右京区)が改修され、高級ホテル「Hotel宇多野京都別墅(べっしょ)」としてオープンした。ホテルニューアワジ(兵庫県洲本市)が手がけた。京都市独自の「上質宿泊施設誘致制度」が適用された、開業第1号だ。
市などによると、旧鳴滝寮は1939(昭和14)年、電力会社・京都電燈の重役の邸宅として建てられた。昭和の作庭家・重森三玲による庭園もある。譲渡を受けた市は戦後、交通局の保養所としていたが、2015年に売却。その後は所有者が変遷した。
ホテルニューアワジが19年に土地・建物を取得。総事業費約17億円をかけ、昭和初期の大規模邸宅建築を復元した。敷地面積は3158平方メートル。書院造りや数寄屋建築の意匠が施された本館、アールデコ風の洋館、新館の3棟からなり、全10室。11月に開業した。同社としては京都で3カ所目、西日本で18カ所目の宿泊施設となる。
ホテルニューアワジグループの木下紘二副社長は「消えた地域の灯(ひ)をもう一度灯(とも)したいという思いで、史料に忠実にリノベーションしました」と話す。
市の上質宿泊施設誘致制度は、住民生活との調和を前提として、そこでしか味わえない京都の魅力を体験できる上質な宿泊施設を誘致する制度。この制度の適用を受けたホテル建設は仁和寺(京都市右京区)や相国寺(京都市上京区)の近くでも計画されている。