生物多様性を回復に向かわせる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」に企業が注目している。自然と共生するノウハウで、新たな商機を生み出している。企業の緑地確保の取り組みを資金面で後押しする国の制度も始まる。
2010年に完成した富士山南陵工業団地(静岡県富士宮市、48ヘクタール、11社)には、絶滅危惧種のキンラン(ラン科)やヒメボタルも生息する。原野造成の計画段階から自然環境の再生と保存を目指し、大成建設が設計、施工した。
09年に工場周囲(8ヘクタール)に様々な種類の苗木を植え、互いに競争させた。10年後には勝ち抜いた木がつくる森になった。
進出企業が森づくりの資金を出し、大成建設が技術を提供。富士宮市や住民、NPO、大学の産官学民が連携して、活動を続けてきたのが特徴だ。
同社自然共生推進室の鈴木菜々子室長は「地域の認知度と企業の意識が向上し、新しい付加価値が生み出せた」と話す。
この森の広場で5月下旬にあったイベントで、住民ら約90人が緑を楽しみながら交流した。
開幕のあいさつをした「佐藤工機」の佐藤憲和社長は、開発コンセプトに賛同し進出を決めた。以来、同社は森づくりに積極的に携わっている。
佐藤氏は「継続が大事。企業として出来る活動を続け、次世代につなげていきたい」と話す。
大成建設は、ここで培ったノウハウを国内外に広げていく考えだ。
こうした取り組みは、経済界に広がっている。
大東建託は5月から、首都圏…