子どもたちの手で伊吹山に緑を取り戻そう――。ふもとの滋賀県米原市立伊吹小学校で11日、全校児童66人が5月から育てた低木のイブキジャコウソウを市側へ渡した。10月初めに市が8合目に植えて、緑の復元に役立てる。
鹿の食害が深刻、土砂災害も
滋賀・岐阜県境の伊吹山(標高1377メートル)では、温暖化の影響で冬を越すシカが増えた。植物が食べ尽くされ、南側の斜面を中心に山肌がむき出しの裸地になっている。
大雨を保水できず、2024年7月の豪雨で伊吹小学区内が3回、土砂災害にあった。その前年に登山道も崩れ、今も通れない。
鹿が好まないイブキジャコウソウ
イブキジャコウソウは、伊吹山に自生するシソ科の低木。「百里香(ヒャクリコウ)」とも呼ばれ、ハーブのような香りがする。シカが好まない香りという。
地元で伊吹山保全に取り組む「ユウスゲと貴重植物を守り育てる会」(高橋滝治郎会長)の竹岡昌彦さん(69)らが伊吹山の3合目で採取し、接ぎ木で苗を増やした。「自分たちに代わって山を守ってほしい」と5月7日に児童らに渡し、苗ポット150個に移した。
児童らは水やりなどの世話をしてきた。6月に小さな花が咲いた。
その苗ポットをこの日、小学校の体育館で角田航也市長らに渡した。6年生の花沢大和さんは「伊吹山が復活できるように使ってほしい」。堀月日(つきひ)さんは「世話は楽しかった。緑がもとに戻って元気になってほしい」と話した。
竹岡さんは「子どもたちが協力してくれたのがうれしい。山に戻して大きくなり、斜面を守ってくれることを願う」。角田市長は「愛情や思いが詰まった苗が伊吹山を元気にしてくれる。まちの宝物・伊吹山を一緒に守っていってほしい」と語りかけた。