村木嵐さんの新刊時代小説「いつかの朔日(さくじつ)」(集英社)は徳川家康に仕えた親子を通して戦国の世を見つめる。いつか天下をとる人だと家康を信じる忠臣たちを描いた連作短編集だ。
家康の忠臣、鳥居元忠にひかれていたと村木さんは言う。少ない軍勢で伏見城に10日以上籠城(ろうじょう)し、主君のために命をかけた。「かっこいいなと。どうしてこのような人になったのか。そのもとには父親忠吉の存在があった」
この鳥居忠吉、元忠の親子を軸として、主君となる家康の成長を浮き彫りにした物語だ。幼いころに父親を亡くし、今川家の人質となった家康。竹千代と呼ばれたころからそばで仕えたのが元忠であり、家康の出世を信じて松平家を支えたのが忠吉だった。「忠吉はつらい時代を耐え抜いた。地味に見えますが、彼もかっこいい」
元忠と父親の忠吉、家康と父…