脳性まひで手足のまひと言語障害がある神奈川県鎌倉市の国分智代さん(46)が、30年間にわたって書いてきた自作の詩を展示する「伝えきれない私の言葉展」を、12~13日に市内で開く。「うれしいこと、悲しいこと、思いはいっぱいある。その思いを少しでも多くの人に知ってほしい」。50音表を1文字ずつ指でさして抱負を表現した。
国分さんは養護学校の授業で詩作を教わり、自身の思いなどを表現する手段としてきた。母のキクミさん(75)が聞き取り、2009年から詩にイラストを添えてカレンダーを作製。数年前からiPadで書くようになり、2年前には詩集を自費出版した。
「伝えたいこと いっぱいあるのに また 今日も 『あかさたな』行から始めるの? もう うんざり なかなか 伝えきれない わたしの日常」
言葉を発しても伝わらない、日常生活でのもどかしさや感謝の気持ちを表現する。
「たまに『歩けたらな』と思うけれど この身体だから 歩めた道がある この身体だから 出会えた沢山(たくさん)の人がいる 傷ついて 気づかされた いろんな気持ち その ひとつ ひとつが わたしの愛(いとお)しい足跡」
企画展は国分さんと親交があった介護福祉士の山中彩さん(38)が提案した。4年前に会場も用意したが、開催直前に新型コロナによる緊急事態宣言が出され断念。今回再び準備を進めてきた。
山中さんは「言いたいこともすぐに伝えられないなか、国分さんがつづった素直な思いや日々の気付きを知ってもらいたい」と話す。
会場のデザインはグラフィックデザイナーの阿部ゆいさん(27)が担当した。それぞれの詩に7色以上のカラーパレットを用意。来た人に詩から感じた色を選んでもらう。
「詩を読んでどんな色を感じたか考えてもらうことで、詩の味わいが深くなる。国分さんにその思いをフィードバックできれば」と語る。
展示する30点について国分さんは「自分の障害をわかりやすくまとめた。平和や世間で起こっていることに対しての私なりの意見だったりする。何かを感じていただいたらうれしい」と説明した。
会場は鎌倉駅徒歩10分のギャラリー&カフェ「ジャック&豆の木」(同市由比ガ浜2丁目)。入場無料。12日は午前11時~午後5時で、午後1時から約1時間のトークショーがある。13日は午前11時~午後3時。問い合わせはメール([email protected])で。