神輿を担ぐ惟村悠斗さん=2024年11月23日午後1時37分、高知県いの町、羽賀和紀撮影

 人口減少で継承することが難しくなった地域の祭りや伝統芸能を途絶えさせまいと、高知県は今年度から大学生らを「担い手」として派遣する事業を始めた。23日には、300年以上続くとされる、いの町の椙本神社で執り行われた秋大祭の「おなばれ」に11人を派遣した。

 地元では「大国(だいこく)さまのおなばれ」と呼ばれ、江戸時代から続く伝統行事。境内での神事のあと、約150人が神輿(みこし)を担ぐなどして約3キロを進む神幸(しんこう)が見どころだ。

 県から派遣されたメンバーは、1週間前にも祭りの準備や境内の掃除などを手伝い、祭りへの理解を深めてきた。神輿を担いだ惟村悠斗(これむらゆうと)さん(23)=高知大院=は「あれだけの人数で担いでも肩に重みをずっしり感じた。これまでの人が祭りをどんな感じでやってきたのか興味が深まった」、こども神輿のサポート役を務めた橋本侑来(ゆうき)さん(20)=高知大2年=は「事前準備から参加させてもらうことで地域の人に受け入れられ、より一層祭りを楽しむことができた」と振り返った。

 宮司の杉本泰郷さん(34)は「おなばれは、この町に根付いた貴重な文化。いろんな人の力を借りて、これからも大事な伝統を守っていきたい」と話していた。

 県が2019~21年度に実施した調査では、伝統芸能981件のうち、約4割が人口減少などの影響で継続できなくなっていた。県が定めた中山間地域再興ビジョンでは伝統芸能を「地域の誇り」と位置づけ、26年に開催される「よさこい高知文化祭」(国民文化祭)では基本方針の一つに「伝統芸能の再興・継承」を掲げている。(羽賀和紀)

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