パリに住む仲良し2人組「リサとガスパール」が誕生してから、今年で25年を迎えます。赤と青のマフラーがトレードマークの2人は好奇心が旺盛で、フランス国内にとどまらず、世界中へ旅をします。作者のアン・グットマンさんと、ゲオルグ・ハレンスレーベンさん夫妻が7月上旬、9年ぶりに来日した際に誕生秘話を聞きました。

もとはリサひとりの設定 編集者の提案でガスパールが登場

 アン・グットマンさん ゲオルグに出会ったころ、彼はジャングルの絵を描く本に携わっていました。私は都会で何かが起こるストーリーをやりたいと思っていました。実は彼も都会的な感じの絵がすごく好きだったので、一緒に何かやりたい、仕事をしたいなと考えました。

 ゲオルグ・ハレンスレーベンさん そのころ僕はジャングルばっかり描いていて、もう緑にはうんざりしていました。リサはパリの文化施設ポンピドゥー・センターに住んでいる設定ですが、実はアンの最初のストーリーではリサしかいなかったんです。でもピエール・マルシャンという最初の編集者が「男の子のキャラクターも居たらいいんじゃない」と提案しました。「絶対うまくいくと思うよ」とも助言をくれ、ガスパールは後から誕生しました。それで2人一緒の話になったんです。

 もし彼の助言がなければ、リサ1人の話になっていたかもしれませんね。いま思えば、彼は先見性がありました。言われた通りにやったらすごくうまくいって、本当に彼のことをよく思っています。フランスで出した本には「アイデアは彼から」という意味を込めて彼の名前を入れています。

 アンさん リサとガスパール2人の話になって、1人では描けない奥行きができました。

 ゲオルグさん 実はリサとガスパールは、僕ら2人というよりも、アンと弟が小さかったころに似ているんです。

 アンさん はい。2歳年下の弟がいるんですよ。

 ゲオルグさん リサがもらったプレゼントをガスパールが盗む、という話があるんですが、アンと弟の子ども時代の実体験に基づくエピソードなんです。アンは子ども時代の体験をすごく鮮明に覚えているし、どんな「ごっこ遊び」をしていたかを思い出すのも得意です。そこから着想を得ることがあります。

 アンさん 私の小さいときの話ですけど、私が何か失敗をしたとき、代わりに弟にリスクを取らせて、弟のせいにすることがありました。これは何となくリサの性格に通じる部分がありますね。

 パリ在住の仲良し2人はうさぎでも犬でもない。ジャングルや美術館、ベネチアや東京へ旅をしたり、プレゼントを考えたりするが、いたずらが過ぎて「ひゃーさいあく!」な展開になる。「リサとガスパール」シリーズは世界各地で翻訳され、日本を含めて累計300万部超に上る。(河出書房新社が2023年から「新訳版」8巻を刊行。ブロンズ新社版は00~21年に40巻刊行、計100万部あまりが発行された)

 ゲオルグさん 普段の作業の…

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