寛也君を抱っこする栗並えみさん=栗並さん提供

 「おやつをのどに詰まらせた。すぐ病院に行ってください」

 15年前、愛知県碧南市の栗並えみさん(46)は長男の寛也君(当時1)を預けていた認可保育園からの電話で病院に駆けつけた。元気に登園したはずの寛也君が、人工呼吸器をつけられ、横たわっていた。

 「お母さん、来たよ」。呼びかけ、手を握っても返事はない。39日後、意識が一度も戻らないまま、栗並さんの腕の中で息を引き取った。1歳5カ月だった。

 寛也君はなぜ亡くなったのか。園は当初「適切に見守りをしていた」と市に報告しており、園と市がまとめた報告書を見ても事故当時の詳しい状況はわからなかった。

 園から示された再発防止策は「お茶を飲ませる」「『かみかみごっくんしようね』と声をかける」の2点だけだった。

 「問題のない保育のもとで人が死ぬということが、本当にあるのか」

 疑問を抱いた栗並さんが夫とともに保育園に通い、保育士一人ひとりに聞き取りを進めると、寛也君の隣にいたとされる保育士が事故直前、席を離れていたことがわかった。

  • 【手引の詳細】食事のどに詰まらせる事故防げ パッとみて分かる工夫

 おやつの出し方にも問題があった。事故があった日に出されたのは、人形焼のような形のパサパサしたカステラや、直径1.5cmほどのラムネ菓子など。

 事故の1年後に市がまとめた事故報告書などによれば、寛也君は適切な水分補給をしてもらえないまま唾液(だえき)が吸収されやすいラムネとカステラを立て続けに食べ、保育士が席を外している間にのどに詰まらせたとみられる。

「せめて学んで」 国に働きかけた

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